- O.S.さんの基本情報
進学先 | University of Oxford(オックスフォード大学) |
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専攻 | Mathematics and Computer Science |
GPA(4段階) | 3.2 |
TOEFL・IELTS | IELTS 8.0点 |
主な課外活動・受賞歴 | ロボカップジュニア、数学オリンピック、情報オリンピック、大学数学のゼミ、情報オリンピック夏季セミナー、学校内の数学勉強会の運営、競技プログラミング、英語ディベート |
合格した大学 | (英)University of Oxford, University College London, The University of Edinburgh, University of Manchester (日)東京大学、慶應大学、早稲田大学 〈一般入試〉 |
卒業年度 | 2021-2025 |
出身高校 | 都内公立 |
IB・AP | A-levelを受験:A*A*A |
受験校数 | 合計8校 (英)5校 (日)3校 |
- 海外進学を考え始めたきっかけは何ですか?
- 海外を真剣に考えるようになった最初のきっかけはSNSです。
昔からプログラミングが好きで、技術系の人をたくさんフォローしていました。そこで印象的だったのが、ある人の大学の授業や課題に関するツイートです。彼はオックスフォードの1年生だったのですが、その授業の内容がちょうど自分も当時興味を持っていた分野で、こんなことを大学1年生から勉強できたら最高だと思いました。
オックスフォードに始まりさまざまな海外大学を調べるにつれて、早い段階から好きな科目を専門的に学ぶイギリスの教育は、やりたいことが定まっている自分に合っていると感じました。世界的な評価の高い環境で勉強して研究してみたいという気持ちや、イギリス生活・寮生活への憧れも大きかったです。
- 受験する際、大学でやりたいことは決まっていましたか?
- 決まっていました。出願時点では数学的な何かをコンピューターで効率的に計算することに興味がありましたが、今後変わっていく可能性も高いです
- プログラミングに興味を持ったきっかけは?どのようにして決まっていきましたか?
- プログラミングを始めたのは、元をたどればゲームを作って自分で遊びたかったからです。ところが、図書館でプログラミングの本を物色していくと、コンピューターにさせたい処理を記述する方法や、その捉え方がたくさんあることに気が付きました。そのいろんな視点を勉強していくのが楽しくて、ゲームは作らずに本ばかり読んでいましたね。
でも、情報関連の課外活動にいくつか取り組むうちに、主な興味の対象も少しずつ変わっていきました。
- 海外進学に関して、周囲からの反対はありましたか?
- 反対はなく、むしろ応援してくれました。学費の面では親に心配をかけましたが、奨学金に落ちたら日本国内で進学するつもりだと伝えていました。
ただ、海外を目指していることはできるだけ周りに言わないでいました。合格できるかもわからない海外の大学に行きたいんだと言うのは、勇気がいることでしたね。それでも率直な悩みを聞いてくれる友達は、とても心の支えになっていたと思います。
- どのように志望校を決めましたか?
- オックスフォードとケンブリッジで迷いましたが(どちらか片方にしか出願できない制度になっているため)、先程の話にあったオックスフォード生のツイートの印象や、数学とコンピューターサイエンスの joint degree (複数の専攻を同時に学ぶ制度)があったことから、オックスフォードを第一志望としました。日本育ちの自分にとって、正直オックスフォードがどれくらい難しいかも本当に合格できるのかもわからなかったので、周りには東大が第一志望だと言って、東大にも合格できるよう同級生と一緒に受験勉強をしていました。
- パーソナルステートメントにはどんなことを書きましたか?
- 志望コースの selection criteria (選考基準)に沿うように内容を決めました。UCAS(イギリスでの大学受験システムを運営している団体)や志望大学・コースのwebサイトにもガイドがあり、参考になりました。
自分は課外活動を軸として、大学での学びに対する適性をアピールしました。割と具体的な興味を長期的に持っていて、数学書を読んだり、ゼミに貢献したりして、コツコツ学ぶことへのやりがいを感じていることが大学に伝わっていたらいいなと思います。
- パーソナルステートメントを書くときに気を付けたことは?
- とにかく手を動かすことです。自分の場合、かっこいいイントロを書こうとして手が動かず、かなり苦しみました。最初に書いたものはどのみちカットしたり書き直したりするので、まずは考えすぎずに書き上げてしまうといいでしょう。
それから、これも大学のガイドに書いてあったことですが、課外活動や実績を列挙して終わりにしないように気を付けました。なぜ自分がそれに取り組み、それによって自分が何を学びどう変化したのかを振り返ることで、より自分が大学での学びに値すると考えてもらえるんじゃないかと思います。
- 課外活動はどんなことに取り組みましたか?どうしてその課外活動に取り組んだのですか?
- パーソナルステートメントに書いた課外活動は以下のものです。
・ロボカップジュニア(世界2位)
これはロボット作りをやっている友達に誘われて始めました。戦略を考えながら自分たちのロボットに磨きをかけていくのが楽しかったです。処理の高速化を通してコンピューターにより深い興味を持ち、他のコンテストにも興味がわきました。
・数学オリンピック(本選出場)
・情報オリンピック(本選出場)
この2つは、もとからこれらの分野が好きだったから始めたものです。ですが思うように結果が出ず、SNSで自分を周りのすごい人と比べて落ち込みながら、実績のために1年間頑張りました。結局、目標には届かずに終わります。この挫折がすごく大きな転換点になりました。
・大学数学のゼミ
・情報オリンピック夏季セミナー
・学校内の数学勉強会の運営
科学オリンピックでの経験を通して、競い合うことを考えずに面白いことを勉強するのが自分には一番楽しいし、成長できるなと気が付いたので、こうした機会を増やすように行動しました。これがすごくやりがいがあり、大学で学問をしっかり学びたいという気持ちの元になりました。
このゼミというのは、SNSで繋がった人たちが集まって始まりました。教科書とする数学書を選び、5人ほどのグループで順番に講師役を担当してみんなで読み進めていく、輪読という形式です。大学で専門的に学び研究していく上でのスキルが身に付きましたし、興味も芋づる式に広がりました。これは自分がパーソナルステートメントで一番強く、受賞歴以上に売り込んだものです。
・競技プログラミング
これは情報オリンピックの親戚みたいな競技です。一時期は実績を得るために取り組んでいて、情報オリンピックが終わってからしばらく離れた時期もあったのですが、精神状態が良くなって楽しくなってからまた成績が伸びてきています。実は、これをきっかけに得た知識や考え方が、筆記試験や面接でめちゃくちゃ役に立ちました。中身は数学パズルとアルゴリズムなので、数学・コンピューターサイエンスという志望にもぴったりでしたね。ただし、イギリスの筆記試験対策のためだけに競技プログラミングをやるのはさすがに遠回りだと思います(笑)
・英語ディベート
英語力や広い関心を持っていることのアピールとして、パーソナルステートメントの最後の方で触れました。
- IELTS勉強方法で、オススメのものはありますか?
- 一番に重視したのは、とにかくたくさん解くことです。インターネットで過去問や予想問題がたくさん手に入るので、それをこなしていきました。それからband descriptors(IELTSにおける審査基準)をチェックして、何ができるようになるべきかを意識していました。
ライティングは練習で一番伸びた分野です。実際に時間を測って問題を解いた後、模範解答と突き合わせたり、書き直したりして、着眼点や表現の工夫を学んでいきました。また、出題パターンとそれに対する解答例を調べたり、数値の上昇や下降、割合の表現などをまとめたりしました。これにはIELTS Lizというwebサイトがおすすめです。
逆に、スピーキングは期限ぎりぎりまで苦労しました。周りに英語で会話する機会がなかったので、問題を見て自分の答えを録音し、どうすれば改善できるか考えることを繰り返しました。友達と録音を聞きあって気づいた点を共有するのも、刺激的で楽しかったです。オンライン英会話で練習する手もあったと思います。
リスニングとリーディングは特に対策しませんでした。日本の大学受験に向けた勉強で力が付いたように思いますし、普段からインターネットで英語によく触れていたことも大きかったです。知らない語句が出てきたらその都度調べるようには心がけていました。
最後に、問題との相性や似た問題を過去に解いたことがあるかどうかで取れるスコアは変動します。テスト形式によっては1週間もせずにスコアが出るので、何度もIELTSを受験しているうちに目標を達成できるかもしれません。お金はかかりますが…
- A-level を受験されたとのことでしたが、どのようにしてA-levelについて知りましたか?
- まずは大学のwebサイトです。オックスフォードの数学・コンピューターサイエンスコースのページを開くと “Admission Requirements” (受験における必要項目)というページがあり、そこで初めてA-levelというものを知りました。
そこからは “how to take A-level in japan” とか、”how to get A-level qualification without going to school” ようなことを検索して、A-levelを国内で受ける方法を調べていきました。
一番参照したのは Cambridge Assessment のサイトで、シラバスや過去問、教科書、Cambridge School(ここで A-Level の試験が開かれる)の場所などを調べるときにお世話になりました。
困ったときは British Council や大学に問い合わせたりもしましたね。Practical Tests や Predicted Grades などについて質問したら丁寧な回答が返ってきて、とてもありがたかったです。
- A-level勉強方法はいかがですか?
- 自分が受験したのは数学、高度数学、物理の3教科なので、これらについて感じたことを述べたいと思います。
基本的に、A-levelのカリキュラムは日本の高校よりも進んでいます。シラバスや過去問はインターネットで手に入るので、ここから知らないものを探し、穴を埋めていきました。知らないものを見つけたとき、簡単そうなものや予備知識があるものはインターネットで調べ、ちんぷんかんぷんな分野については教科書や参考書を買って読んでいきました。オンライン家庭教師を利用する方もいるようです。
試験自体は基本問題が主なので、過去問を何周かすれば対策としては十分でした。これは特に理系教科のアドバンテージじゃないかと思うのですが、試験本番での英語力はほとんど重要ではありません。記述式ではありますがエッセイなどではないので、数学の答案や物理の実験計画が書ければなんとかなりました。
とにかく試験が多くて忙しかったです。ギャップタームとして日本の大学に通いながら受験したのですが、常に試験に追われる状態がしばらく続きました。これからA-level試験を受ける方は、早めに対策に着手することをおすすめします。
- 誰に推薦文をお願いしましたか?
- 担任でもあった数学の先生です。どんな内容を書いてほしいかを含めて、高3の7月始めにお願いしました。高校の簡単な説明や、授業内外での数学等の科目への取り組みの様子などを書いてもらい、英語ネイティブの先生に翻訳してもらいました。
- 日英併願のアドバイスをお願いします。
- 日本の勉強はしっかりやっておくと得だと思います。科目や出願先にもよりますが、日本の受験勉強が得意になると、A-level 試験やイギリスの大学独自の試験にも活かせます。
ちなみにですが、ファウンデーションコースに出願するにはおそらく日本の高校のGPAが必要ですが、直接学士課程に出願するならGPAは不要でしょう。自分は高校の成績を大学に提出すらしませんでした。ただし、自分の経験に基づくと、GPAがあまりに低いと日本の奨学金の書類選考で著しく不利になるようです。やはり成績は高いに越したことはないですね。
忙しい時期もありますが、計画的に乗り切りましょう。
- 出願のタイムラインについて教えてください!
- あくまで一例ですが、自分の高3以降のスケジュールはこんな感じでした。
6月上旬 パーソナルステートメントに着手
7月上旬 学校の先生に夏休みにかけて推薦書を依頼
8月下旬~ パーソナルステートメントを何人かに見てもらう
9月 学校からの推薦書を英語に翻訳してもらう
10月 UCASで出願を完了
11月 大学独自の筆記試験
12月~1月 大学の面接試験
1月~ 合格発表
3月~ A-level勉強
5月~6月 A-level試験
7月 IELTS練習・受験
8月 A-level試験の結果発表、イギリスの合格確定
自分は日本の受験が終わってからA-levelを勉強し始めましたが、どこかで勉強に躓くと試験に間に合わなくなる危険がありました。その直前は日本の大学受験で忙しい時期ですから、かなりバタバタしていました。もっと早めに動き始めるとよいかもしれません。
IELTSの対策を7月になって始めるのは完全に遅いです。余裕だろうと思ってIELTSのスコア報告の締切の月に受験したら、必要点数にちょっと届いていなくて焦りました。高3の3月かそれより前にさらっと必要点数に到達できていたら理想でしたね…
- オックスフォードの面接ってどんな感じでしたか?どう対策しましたか?
- 自分の場合、難しい数学的な問題がポンと出されて、「一緒に考えてみようか」と言われる感じでした。解けなければほどほどのタイミングでヒントや答えも出してくれます。何も考察できなかったり、問題がそもそもわからなかったりして焦る場面もありましたが、怖くはなかったです。
過去に出た問題を見る限り自分の得意分野だったので、日本の受験勉強以上の対策はしませんでした。数学オリンピックや競技プログラミングの経験、数学の本やYouTube動画を英語で見ていたことなどが役に立ったなと思います。論理パズルももしかしたら効果があるかもしれません。
もっと練習しておけばよかったと後悔したものもあります。一番は英語です。ややこしい問題に対するアイデアや数式を口頭だけで説明するのは、かなり難しいと感じました。自分が受験した年はコロナウイルスの影響で面接が全てオンラインだった、というのもあります。基本的にはMiroというオンラインホワイトボードを使って議論するのですが、それが無く会話だけで面接が進んでいくときは、手元に図や数式を書いて伝えるということが難しく、本当に苦戦しましたね。
対策として、問題に対する答えを数式を使わずに英語だけで、または口頭で説明する練習をするとよさそうです(場合によりますが、面接の形式が決まってからでもよいと思います)。友達と過去の問題を出し合ったり、録音するのも有効でしょう。オンライン家庭教師で模擬試験をお願いしたという人もいました。
もう一つ失敗したと思ったのは精度です。普段答案を書く時にはしないような勘違いや早とちりも、口頭だと(さらに英語だと)うっかりやってしまいます。対策としては、やはりイメージトレーニングだけでなく実際にアイデアや答えを口に出して説明する練習をすることだと思います。
なお、オックスフォードではおそらく複数回の面接を受けることになるのですが、回によって相性があるようです(少なくとも自分の場合はありました)。最初でうまくいかなくても、落ち着いて次に挑みましょう。
- 海外進学塾には通いましたか?
- 通いませんでした。やはりお金がかかってしまいますし、自分のペースで学べることは自分でやりたいという好みの問題でもあります。学校のネイティブの先生から協力をいただけたことはとてもありがたかったです。
- 受験生へのメッセージはありますか?
- 不利な環境を理由に、志望を諦めないでほしいです。学校がIBをやってないからとか、塾にいけないからという理由で、「無理だ」と諦める前に、何とかする方法はあるということを知ってもらえたらと思います。
それから、受賞歴に囚われないでください。自分も「いい大会実績を出さなきゃ」「周りのすごい人たちに追いつかなきゃ」と必死になっていた時期があり、精神的にもきつかったです。しかし、受賞歴は誰かを定義するものではありません。どんな考えで活動して、そこから何を感じて、どう次の学びに繋がったかなど、結果に依らずとも自分を表現できるポイントはたくさんあります。進んだ本を読むとか講演を聞くのも立派な実績です。それに、楽しんで物事に取り組んだ方が良い結果になることもあるのではないでしょうか。
編集者ひとこと
まず、学校の勉強とは全く別にA-levelを受けて、ファウンデーションを経ずにイギリスの大学に出願されているということに驚きました。IB校に通っていない場合は、ファウンデーションコースを取るというのが一般的だと思うので……。通っている高校のカリキュラムがイギリス受験に向いていなかったとしても、諦めずに努力を重ねれば、道はあるということを、皆さんも私と同様に感じてもらえればと思います。課外活動などに関しても、純粋に自分が楽しいと思えるもの、やりがいを感じられるものに素直に取り組んでいる方だと感じました。やりたいことまっしぐらに進んでいく勇気があるからこそ、逆境でも諦めずに努力を続けられるのかもしれませんね。